食虫植物顔出しパネル ~その3、サラセニア~

食虫植物顔出しパネル ~その3、サラセニア~

食虫植物顔出しパネル、個別の紹介_

3つ目はサラセニア。
ハエトリグサ、ネペンテス(ウツボカズラ)と知名度の高いものが続きましたが、サラセニアとなると”はてな?”となる向きも多いでしょう。この姿、形にピンとくる方はけっこうな食虫植物好きで、たぶん現物もご覧になったことがあるではないでしょうか。

サラセニアは食虫植物界ではかなり背の高い植物で、
自生地(アメリカ〜カナダ)では、大きいものだと高さ1mに達するものもあるそうです。
この筒型で、開口部ろうと型の植物はネペンテス同様に虫を落として捕虫するシステムです。

では、こちらのパネル制作について_
モデルに選んだのは蓋のヒダと網目模様が美しい品種で、レウコフィラといいます。
3枚のパネルは2日間での完成を目指していたので、もっと装飾性の低いシンプルなタイプにしようか…と品種選びには、短時間ながらかなり逡巡しました。とはいえ見栄えを重視せずに何を重視するか、という気概でヒダ+網目でやることに決定。
ラフに描いている段階は良かったものの、肝心のヒダと網目は適当に描こうとするとどうにも上手くいきません。結局、良い資料を探し、かなり丁寧に観察して描きました。まったく”急がば回れ”とはよくいったものですね。ことに模様というのも下手に描くとリアリティのない、土台となるものから乖離したものになってしまいます。

そういえば、かつて、ある友人に「私、リアルな絵って嫌いなんだよね」と言われたことがありました。
私にしてみれば、リアルかリアルじゃないかという判断基準は到底納得いくものではありません。
緻密か簡略かが判断基準なのだとしたら、あまりに思考回路が単純でつまらない。
そんなことよりも、制作物に面白味なり風情なりが宿っているか否か、そこが問題なのではないかと私は思います。自分の制作でいえば、常日頃、空気感のある表現を目指しています。空気感とはすなわち”そこにあるという感覚”であり、存在感につながるものだと考えています。存在感、というのはつまり手応えでもありますよね。

周囲を飛び交っている昆虫については右上がコガネムシ、左下がエラフスホソアカクワガタをモデルにしています。コガネムシは触覚の面白さ、クワガタは色合いと形で選んだのですが、スペースの問題があってクワの部分が短めになっています。サラセニアは北米〜カナダ、エラフスホソアカクワガタはスマトラ島ですが、今回は怪しげでちょっと不気味な世界観を表現していますので、自生地・生息地等は構わず描いています。最も、今回描いているパネルに登場している食虫植物と虫はどれも日本で見ることができるところからいえば”舞台は日本”といえなくもありませんね。
展示会場で顔出しに触れたみなさんは、それぞれ虫になって楽しんでいらしたようです。
全3枚、各種新調対応を目指したのでその点のバランスも良かったのではないでしょうか。

今回は制作日数との絡みで心臓バクバクさせながらの制作となりましたが、その甲斐あって面白いものに仕上がりました。