2022年の9月、仕事場の事務所前にあるゴミ箱の上で産卵中のがに遭遇した。
あまり見たことのない美しい模様の、でもちょっと疲れた風情の蛾が
驚くほど鮮やかな蛍光緑の卵を、職員用ゴミ箱の古びた木製天板の上に一心に産みつけている。
卵は1箇所というのではなく、割とパラリぱらりと微妙な移動をしながら少し離し気味な産み方のようだった。
私はオオスカシバという、一見ハチドリかと見まごうような蛾のことが好きなのだけど、
この、初めてみる蛾も立ち去るには惜しい存在に思えた。
モフモフした毛並みと美しい紋様は後々調べたところ”ウンモンスズメ(雲紋雀)”という名の、
オオスカシバ同様にスズメガの仲間であることが分かった。
スズメガの仲間はちょっと虫を超えた、動物っぽい印象を持つものがあるようだ。
蛾というとあまり人から好意を持たれていないことも多い気がする。
私自身、あの不安定な、いつぶつかってくるともわからないような飛び方には度々肝を冷やしたものなのだけど….。
とはいえ、この時目にしたメスのウンモンスズメはまるでお母さん。
人間という巨大な敵かもしれないものに遭遇しながらも、懸命に産卵を続ける姿に、
種は違えども強い共感のようなものを覚え”みんな生き物なんだよねぇ”と胸熱な心持ちになったのであった。
と、そんなことを言いつつも、私はこの夏の時期、
変化朝顔についたスズメガの幼虫の駆除をしなくてはならない。
この絵のモデルとなったウンモンスズメに出会った年も、青虫を見たら捕殺しなくてはならなかったのだけど、
この時ばかりはお母さん蛾の姿が崇高に思え、邪魔したくないという思いでいっぱいだった。
なお、スズメガはヤドリバエというハエに規制されることが多いようで、
お母さんバエに卵を産みつけられたスズメガの幼虫は、体内を餌にされてしまい、
大人になる前に絶命するのだとか。。。
ウンモンスズメの産卵に感動した私とはいえ、ヤドリバエの産卵を思い浮かべると、
どうにも感動するとは思えない気がする💦
※和紙にペン画(上画像は和紙のモアレを消したもの。下画像はモアレを生かしたもの)
着彩したものはまた後日。